「もっと大きく口を開けて歌いましょう」の落とし穴の話。
茂原市主催ゴスペル教室。
その講座の中でも簡単にお伝えした内容の中からひとつ。
(こちらも以前アメブロ時代に扱ったお話なんですが、
再編してお届けします♪)
個人レッスンの時にも時々生徒さんから聞かれる事なので、
詳しく解説してみよう思います。
表題の、
「もっと口を大きく開けて歌いましょう!」
という言葉。
学校の音楽の授業や、校歌を歌う時に言われた記憶、
みなさん、あるでしょ?
やっぱりそうした方がいいんでしょうか?
そう質問されることがあります。
そもそも、
「口を大きく開けて」は、
どういう意図で言われるのでしょう?
考えられる事をいくつか挙げてみましょう♪
①言葉をハッキリ、滑舌良く。
②声を大きく。
③元気よく。
…と、いったところでしょうか。
さて。
口そのものを大きく口を開けることが、
これらの効果をもたらすことは、
ほとんど無いと思ってよろしいでしょう。。。
まずは①の滑舌についてですが、
関係あるのは口そのものの開け方の大きさではなく、
口の『内側』の方。
口腔内の形や舌の位置を、
どれだけ的確に素早く動かせるか、という事の方がモノを言います。
以前書いた『滑舌の良し悪しは、何で決まる?』という記事の通りです。
詳細はこちらを。
そして②、声の大きさ。
声量を決めるポイントは何かと言うと、
声帯の閉鎖の加減、息(呼気)の量の大小。
そしてもうひとつ重要なのが『共鳴腔』の拡がり。
声を発している時にその響きを作る喉頭・咽頭・口腔・鼻腔といった空間が、
広がれば大きく、狹くなれば小さくなります。
つまりは声を大きくするのに関係するのは、
口は口でも奥側を開けることなんですね~。
百歩譲って、③の『元気よく』の表現としては、
見た目としては有りっちゃ有りかも知れません(笑)。
ただ声としての元気さ、
例えば音色の明るさ、
リズム乗りの良さなどを作るのはまた別の話ですね。
ご覧のように、
『口を大きく開けて~』は発声的には著しく貢献度が低いです(笑)。
それどころか実は、
口を大きく開けすぎてしまうことは、
色々と不具合の元になってしまいます。
まず、あんまり口の動きが大きいと…
疲れます(笑)。ええ。
疲れながら歌っても楽しくないさ・・・(-_-;)
疲労、そして大きすぎる動きは筋肉の緊張を招いてしまい、
声の自由度を逆に奪ってしまいます。
試してみると判りますが、大口を開けたままのどの奥側の共鳴腔を広げようと思っても、引きつった感じになりうまく広がりません。
もっと言うと、
アゴ、外れますよ(;一_一)。
試しに、
この写真の赤い斜線のあたり。
耳の付け根前側を左右とも指でさわりながら、
ゆっっっくり口を大きく開けたり、閉めたりしてみます。
(ゆっくりですよ!絶対強く動かしちゃダメ!)

すると、このあたりがコリコリ動くのがわかると思います。
それが上あごと下あごをつないでいる『顎関節(がくかんせつ)』です。
ボイトレをするとき、歌っているときに、
もしここがコリコリ動き続けるようでしたら、
それは明らかにやり過ぎ、動かし過ぎです。
ひとつ目安として覚えておくといいと思います。
口、のど、声帯などはとてもフクザツに、デリケートにできていますので、
何であれ強い力をかけたり必要以上に動かすことはトラブルの原因になり得ます。
歌声は効率をよくしてナンボ、
省エネしてナンボですので、
それに逆らっていると感じるものは、疑ってかかってみるのが賢明。
きっと学校では今でも歌うときに「口を大きく開けて~元気よく~」って言ってるんでしょうね。
でも特に小学生低学年ころまでは、
こう言うと絶叫音が響き渡りますよね(笑)。
そういう声を出させることは、
子どもの声帯にとっても望ましくないんですけどね。。。
でも『共鳴腔を大きく開けて~』って言っても、
きっと誰もわからないしなぁ(笑)。
※子どもどころか、大人だって分からぬ…
何かもう少し、
子どもに伝わる適切な表現はないもんかしらと、
ちょっと思ってしまうのでした…^^;。
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